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6月5日、足利事件の犯罪者として逮捕され最高裁で無期懲役の刑が決定され千葉刑務所に服役させられていた菅家利和さんが、東京高検より無罪として釈放された。

自分は、この人物が逮捕されてから最高裁で無期懲役が決定されるまでの、足利事件の裁判の経過など全く知らなかったのだが、それを知ったときには驚かされた。

事件が発生したのは1990年5月栃木県足利市。79年、84年にも同じ事件が発生していたが未解決だった為に、栃木県警は必死の思いで捜査を行っていたのだろうか。一寸した事から一人の幼稚園のバス運転手に的を絞り、1年もしつこく尾行など行い、菅谷さんが捨てたゴミから体液の付いたティッシュを採取してDNA鑑定をしたらしい。

そして、被害者の衣服に付いていた精液と菅家さんのDNAは一致しているという事を理由に足利署に連行(一応任意らしいが)され、菅家さんは自白させられ裁判所へ回されてしまったらしい。
ちなみに、連行されてから数日後には数年前の事件に関しても自白させられている。だが、これは不起訴となっている。

第1審では、検察側は勿論の事、弁護側も当時のDNA鑑定の結果を信じ込み、無罪を訴えるのでは無く情状酌量を勝ち取る方針を決めていた。菅家さんも弁護団に逆らう事は出来ず、93年7月に「無期懲役」の判決を受けてしまった。
だが、弁護団は無視したようだが、菅家さんは1審前より無実を主張していた。よって、すぐに東京高裁へ控訴をした様だ。そして、佐藤博史弁護士を中心とした新たな弁護団が編成された。

94年4月から始まった第2審は、96年1月まで17回の公判が行われ、5月に控訴棄却の判決が下される。
第2審は第1審の判決の再審理を求めているものであり、1回から17回の公判の法廷に立った証人は第1審に採用された証拠に関わる人物かと思われる。故に、主に捜査やDNA鑑定などに関わった人物に尋問が行われている。
高木俊夫裁判長は、第1審の判決を殆ど追認すると同時に、第2審でも「当時のDNA鑑定の証拠能力に問題は無く、そして自白を信用できる」とし、控訴を棄却している。

97年1月28日に、弁護団は最高裁へ上告趣意書を提出した。更に、原告に関する新たな事実が明らかとなり、上告理由として補充書の提出を6回行っているが、主にDNA鑑定に関するもので、1回目と2回目の補充書で弁護団が独自に行ったDNA鑑定の結果と科警研のDNA鑑定が異なっている事を指摘し、真犯人と菅家さんのDNAは異なっていると指摘していた。

2000年7月17日、最高裁判所第2小法廷の亀山継夫裁判長以下、5名全員の裁判官が全員一致で上告棄却を決定し、菅家利和さんの無期懲役が決定した。09年6月に、無実の可能性が高まり釈放されるが。

最高裁の裁判官達は、弁護団の補充書による新たな事実を一切認めようとはしなかった。最高裁の裁判官達も日本でDNA鑑定がいつから始まり、そしてどの様に進歩してきていたのはちゃんと理解できていたのではないのだろうか。

まして、上告棄却の一つの理由として、その主文の中に次の様なものがある「弁護人佐藤博史外6名の上告趣意のうち、憲法37条3項違反をいう点は、記録を精査しても、1審弁護人の弁護活動が被告人の権利保護に欠ける点があったものとは認められないから、前提を欠き、その余は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であり、被告人本人の上告趣意は、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない」としている。
だが、これは被告人の訴えを無視し、更にその被告人を無視し弁護活動をした弁護人の活動のみを認めようとしているだけではないのか。これでは、上告の意味など無い。

そして、最も大きな疑問を憤りを感じさせられたのは、弁護団が提出した新たな事実に対する最高裁の判断と決定だ。

菅家さんが逮捕された当時のDNA鑑定は、123ラダーマーカーによるMCT118法で判定されていた様だが、日本でDNA鑑定が始まってまだ2年。その技術は不完全であった事は間違い無く、鑑定できる確立も低かった。科学警察研究所は、DNA鑑定と血液型鑑定の組み合わせで判定を行ったらしいが、識別の確立は「1000人に1.2人」だったらしい。
また、このマーカーは誤差が大きく正しい型判定が出来なかったらしく、警察庁もマーカーに狂いがある事を認めている。そして、このマーカーの使用は中止し、その後の判定は変更しているらしい。

97年10月28日に弁護団は1回目の補充書を提出しているが、この中には弁護団が菅家さんの髪の毛を使って独自に鑑定を行った結果と、科学警察研究所のDNA鑑定の結果が異なっている事を指摘している。

弁護団は菅家さんに髪の毛を手紙に入れて送ってもらい、日本大学医学部の押田教授に髪の毛で再鑑定を行ってもらった。教授は、渡された4本の髪の毛を全て鑑定したらしいのだが、科学警察研究所とは異なる結果「18-29」が出たらしいのだ。

最高裁での判決は、一人の被告人の生死の掛かった重要な事だった筈。その様な事など、判決を下した5人の裁判官などしっかりと認識していた筈だ。
としてみればDNA鑑定が始まった頃の、技術も不安定な状態で行われた鑑定結果に対して、7年後に精度の高いDNA鑑定によって再鑑定された事により全く異なる結果が出たと指摘されている。
更に、科学警察研究所は第1審の判決後には、123ラダーマーカーによる鑑定の誤差を認め犯人のDNAを「16-26」から「18-30」へと訂正したとされている。

最高裁の5人裁判官達も、この事件の上告を受けていたのであれば、これらの情報などは判決を下す以前にしっかりと把握していたのではないのか。
まして、最高裁が判決を下す時点でも、123ラダーマーカーとマーカレットマーカーでは精度には大きな差があった筈。123ラダーマーカーの精度は低く、対してマーカレットラダーマーカーの精度は高く、その差は大きい。この事も、裁判官達はしっかりと把握していたのではないのだろうか。

なのに、上告を棄却した主文には、「本件で証拠の一つとして採用されたいわゆるMCT118DNA型鑑定は、その科学的原理が理論的正確性を有し、具体的な実施の方法も、その技術を習得した者により、科学的に信頼される方法で行われたと認められる。したがって、右鑑定の証拠価値については、その後の科学技術の発展により新たに解明された事項等も加味して慎重に検討されるべきであるが、なお、これを証拠として用いることが許されるとした原判断は相当である」とある。

憲法37条には、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」とある。
だが、菅家利和さんはこの権利を守られていたのだろうか。逆に、守らなければならない裁判所によって奪い取られていたのではないかと思えてならないのだが。

東京高裁、そして最高裁による2つの再審理は被告からの訴えなど一切無視し、ただ控訴、或いは上告された展開などを検証しているだけではないのか。訴えを聞き入れ、真実を明らかにしようなどという意思など、全く感じられない。


 

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