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橋下の「入れ墨」を活用し公務員を責める切っ掛けとなったのは、一人の職員が注目された事からではなかっただろうか。
 
職員の個人名は分からないけど、今年2月に報道されたと思われる児童福祉施設の職員が児童に対し入れ墨を見せたり暴言や恫喝などをしたとされている。果たして事実なんだろうか。
 
 
 
 大阪市が全職員に実施した入れ墨調査で、市は調査への回答を拒否する職員に対し、職務命令違反を理由として減給か戒告の懲戒処分にすることを決めた。
 
 橋下徹市長は未回答者を人事面で昇進させない考えを表明しているが、懲戒処分対象にもすることで、調査に協力しない職員による入れ墨の発覚逃れを防ぎたい考えだ。市人事室によると、約3万3500人を対象に行った調査で、110人が入れ墨をしていると回答。未回答の513人には23日までに答えるよう求めたが、「思想信条の自由を侵す」などとして、拒否を続ける職員が出ているという。
(読売新聞2012/05/24)
 
先ず入れ墨とは何なんだろうな。体の一部、或いは多くの部分に一寸した傷を掘り、そこに墨などを入れて絵を描いていく。これは日本だけに有る事では無く、古代の時代から世界に存在していた一つの文化。
 
日本で入れ墨という名称が誕生したのは、明治43年に発表した「刺青」かららしい。この名称が誕生する以前から、暴力団員と称される者達は体に活発に絵を書いていたのかもしれない。
故に、明治時代には5年から名称はハッキリしないが入れ墨を入れる行為を禁止して入れ墨を入れる事を禁止する「禁止法」が作られ、昭和23年まで存在されていたらしい。それにより、日本では昭和23年までは入れ墨は「非合法」とされていた事となる。
 
だが、入れ墨の「禁止法」は第二次大戦後に昭和23年に解体されている。だが、暴力団員と称される者達が活発に入れ墨を入れていた事から、入れ墨は「良くない物」といった印象を強くされていってたんじゃないだろうか。
 
また昭和23年に入れ墨に関する禁止法は解体されたが、間接的な法は存在しているらしい。よって、間接的な事を適用して入れ墨を入れた者を批判する者が多いのではないだろうか。
 
Wekipediaの入れ墨には法的・社会的規制として下記の様に説明されている。
 
-引用-
 
入れ墨に対する法的規制は、敗戦後の1948年(昭和23年)の新軽犯罪法の公布とともに解かれたため、現在の日本では入れ墨そのものに対する法的規制は存在しない。ただし、入れ墨に対する間接的な法的規制として、次のようなものがある。
 
・入れ墨をした者の入場が禁止されている公衆浴場などに入れ墨をした者が入ると建造物 侵入罪(刑法130条前段)の  構成要件に該当し、入れ墨をした者が退場を求められても 従わなかった場合は不退去罪(刑法130条後段)の構成要 件に該当する。ただし、これ らの罰条の適用例は存在しない。
・暴力団対策法24条は、指定暴力団員が未成年者に入れ墨を施すことを強要する行為など を禁止している。[2]
 一部の地方自治体では、青少年保護育成条例等によって、未成年者に入れ墨を施す行為 が禁止されており、違反して 入れ墨を施術した者は処罰される[14]。
・神戸市の須磨海岸では、須磨海岸を守り育てる条例によって、「入れ墨その他これに類 する外観を有するものを公然と 公衆の目に触れさせること」が禁止されている。
 
入れ墨を入れた者は、暴力団構成員と認識され、公衆浴場(温泉、大浴場、サウナ、銭湯、スーパー銭湯、健康ランドなど)や遊園地、プール、海水浴、ジム、ゴルフ場などへの入場を断られることがある。これは日本では暴力団員が入れ墨を威勢を示す手段として用いてきたことによる。
 
-引用-
 
入れ墨を入れているものは暴力団と認識されるとあるが、それだけ暴力団と入れ墨の関係は深いと意識されているのだろうし、同時に入れ墨を入れた者の入場を拒否しているのでは無く、暴力団員の入場を拒否している事となるのではないだろうか。
 
入れ墨を入れる者は暴力団員と断定する者が多いと思われるが、入れるか入れないかは個人の自由の筈だ。暴力団であろうと無かろうと、入れる事の判断は完全な個人の自由であって、入れているから危険な人物と決め付ける事は、個人に対する大きな偏見となるのではないか。
 
今年の2月に報道される事となった、昨年4月に行われていたらしい児童福祉施設の職員の児童への暴言と恫喝行為が問題視されていたのではないかと思われる。同時に入れ墨も見せていたとされているが、実際はどうだったのだろうか。
 
この事に関しフリージャーナリストの吉冨有治氏はツイート「昨日のキャスト、私の入れ墨問題の発言で誤解を与えそうな書き込みが散見されるので、あらためて記しておきます。私が確認したところ、まず件の職員は何ら処分も受けず他部署に異動している。次にその理由を市に質すと『(子供を脅した)事実は認められなかったから』というもの。」と記している。
 
有富氏のツイートを読んでみれば、大阪市が児童福祉施設に勤務していた職員は自動を恫喝する行動などは行っていない無かったのではないかと思えてならない。まして、本当に児童への恫喝行為などを行っていたのなら、それが明らかとなった時点で即座に懲戒免職としていても可笑しくは無かった筈だ。
 
また産経新聞の記事によれば、
 
-引用-
 
 職員が勤務しているのは、虐待などが原因で感情を適切に表現したり抑制したりすることが難しい子供たちに心理治療や生活指導を行う施設で、定員は入所者・通所者計50人。職員は給食調理を担当している。
 
 昨年4月以降、この職員が「自分の腕の入れ墨を子供たちにみせている」「あほ、ぼけ、殺すぞといった暴言と恫喝(どうかつ)を児童に繰り返している」との告発が市側に複数寄せられた。「児童らが(虐待に続く)2次的被害を受けている」との指摘もあった。
 
 市が調査を進めていた6月、職員が職場の歓送迎会で同僚女性の髪を触ったり、「自分と付き合え。切れると何をするか分からないぞ」と脅迫したりしていたことが発覚。市は9月、停職2カ月の懲戒処分にした。
 
 ところが、市は調査結果で児童に対する問題行動もあったと認定したにもかかわらず、この事実は処分対象とせず、停職後は同じ職場に復帰させた。
 
 さらに、職員は昨年の冬のボーナス(期末・勤勉手当)の勤務査定で「良好」以上の評価を受けていた。市総務局によると、児童福祉施設を所管するこども青少年局の技能職員315人の評価で、4段階のうち、下位2段階のC、D判定を受けた職員はゼロだった。
 
-引用-
 
職員の児童への暴言・恫喝と同時に、昨年6月に行われていたらしい女性への暴力行為が事実だったのであれば、たった2ヶ月の懲戒処分とするのは非常の可笑しな対応ではないか。全てが事実と認識されていたのであれば、懲戒処分では無く懲戒免職とする事が当然の事だったのではないかと思えてならない。
 
まして市が職員を恫喝や暴力などの事実を認識した上で処分を行っていたのであれば、首長である橋下にもこの様な情報はしっかりと伝わっていなければ可笑しいのではないかと思われるが。
橋下は、これらの事実が発覚した時点でこの職員の問題を取り上げ、公開をしていなかったのだろう。
 
だが、有富氏のツイートによれば大阪市は児童福祉施設職員の恫喝などの事実は認められなかったとしている。
 
更に、有富氏はツイートで次の様にも書かれている「わかりません。私も同じ疑問を持っています。不可解ですね。@gogo_nara_iiyo 喫煙や入れ墨職員には免職をちらつかせるのに、入れ墨恫喝職員には免職と言わないのはなぜですか?」と。
 
児童に対する、或いは同僚の女性に対する複数の暴力が行われていたのであれば、即座の免職は当然の事だろうし、と同時に刑事告発なども行わなければならなかったのではないか。だが、その様な行動が行われていたという情報は流れてはいないだろう。
 
まして、指摘されている職員がどの様な入れ墨、或いはタトゥーを入れていたのか分からないが、果たして児童に対する脅し行為となっていたのだろうか。職員がタトゥーなどが実際にあったとすれば、それを見ていた児童達はどの様な印象を持っていたのだろうか。それらに関する情報なども一切無いのではないだろうか。
 
橋下は、この児童福祉施設職員の行動を切っ掛けとして公務員に入れ墨を絡め激しく批判する様になっていた。
 
そして大阪市で、突然に職員の入れ墨が大きな問題というよりも話題となったのは、児童福祉施設の職員が昨年の4月に児童を恫喝してたとされていたとされている一人の職員。公務員に入れ墨は認められないと言い切る様になり、職員アンケートなどを行った。入れているかいなかったかに関してのみ。
 
だが、アンケートには多数の者から任意に回答を求める事は出来ても、強制的に回答を求める事は出来ないのではないのか。憲法第二十一条に「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」更に2「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」国民の表現の自由は許されているが、検閲などによって通信の秘密は侵されてはならないとされている。
 
また個人情報保護法でも個人のプライバシーは保護されている筈だ。また、大阪府労働弁護団が「大阪市による全職員対象「入れ墨に関する調査」の中止を求める声明」を発表している。
 
-引用-
 
 確かに本件は、大阪市職員がその勤務する児童福祉施設で、児童に対して入れ墨を見せたという事実を前提としており、当該市職員の行為が判断能力の未発達な児童に対するものとして不適切であったのは言うまでもない。
 しかし、今回の大阪市による全職員を対象とする記名式の「入れ墨に関する調査」は、以下の点から人権侵害に当たるので、直ちに中止するべきである。
(1)人が身体に入れ墨やタトゥー(以下「入れ墨等」という)を施すことは、個人の表現の自由であり、幸福追求権、人格権の一発露であり、プライバシーである。入れ墨等を施し、これを他人に見せるか見せないか、知らせるか知らせないかは全く個人の自由であって、何人からもその存在を意に反して表明することを強制されるべきものではない。
(2)地方公務員法上、職員が入れ墨等を施すことは何らの義務違反も構成しない。入れ墨等を施していること自体、地方公務員法16条の欠格条項にいう「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者」の一員であることを示す徴表ともならないからである。したがって、地方公務員としてプライバシー権を制約されるべき法的根拠はない。
(3)入れ墨等はその消去が必ずしも簡単ではなく、入れ墨等の存在を隠したいとの思いの者もいる。一方、入れ墨等に対する社会的な偏見は、暴力団対策の強化政策とともに強まる傾向にある。本件「入れ墨に関する調査」は、この社会的な偏見をなくすどころかいたずらに助長するものである。
(4)仮に大阪市の公務遂行において、例えば福祉現場など、対象市民が弱い立場にあって市職員の入れ墨等に対して畏怖心を抱く恐れがあるという場合にあっても、入れ墨等の調査は全職員に記名式で回答を求める必要はなく、各職場の上司が個別に職員に確認し指導する等の方法によれば足りる。
(5)調査票別紙1-1の対象となる部位にある入れ墨等に関しては、外部から認識できるのであるから、全員を対象とする調査の必要はない。
調査票別紙1-2の対象となる部位にある入れ墨等に関しては、外部から認識できないのであるから、そもそも調査をする必要はない。
 
-引用-
 
しんぶん赤旗に記載されているが、大阪市が行った職員アンケートにも日弁連の会長が声明を発表しているが、下記の様にされている。
 
-引用-
 
 さらに、アンケートが任意の調査でなく業務命令であり、正確な回答をしない場合は処分の対象とすること、自らの違法行為を報告すれば懲戒処分を軽減するとしていることについては、あたかもアンケートの該当事項が「違法行為」であるかのごとき前提で処分をちらつかせて思想信条にかかわる事項を答えさせるものだと指摘。「いわば職員に対する『踏み絵』であり、憲法19条が保障する思想良心の自由を侵害するものである」と断じています。
 
-引用-
 
前回の職員アンケートも今回の入れ墨に関する調査とするアンケートも、大阪府労働弁護団及び日弁連会長は違法行為だと主張している。
 
大阪市の首長である前に、弁護士でもある橋下であれば、この両者の主張が正当か否か判断できない事ではないだろう。主張の権利を活用しながら、法を無視した行為を愕然と行おうとしている。
 
大阪府、更には大阪市の首長ともなった橋下は、これまでに自分の行っている事を恥じると思った事は一度も無いのだろうか。
 
また、ツイートなどには「思想信条の自由を侵す」として拒否する事は公務員のする事ではない。或いは上司の命令に従う事は公務員なら当然だろうなど公務に勤める者への批判が多い。
 
だが、民間企業であろうと上司に命従う事は当然の事だろうし、公務に勤める者と同時に同じ国民だ。日本国憲法には「国民の権利と義務」が記されている。第十四条には「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とあるし、第十九条には「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」があり、第二十一条には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」もある。
 
日本国憲法第三章 国民の権利及び義務には十条から四十条までが記されている。これは、どの様な職務についている者であろうと適用される様に確定されている方ではないのか。にも拘らず、公務員はこの枠には値しないとする者もいる。
 
正に公務員は日本国民ではない、と扱っているとしか思われない。何故、公務に勤めているというだけで特別扱い、或いは差別行為を行おうとしているのだろうか。自分は公務に勤める者では無いのだが、一部の者に対する差別的行為に非常に不快感を感じさせられてならない。
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